鉄に優しく、力強く守る防錆・防食溶射
防錆・防食溶射は主に亜鉛、アルミニウムおよび亜鉛・アルミニウム合金の溶射材料が使用されており、古くは1922年にパリのSt,Denls水門に実施されている。
その後、内外ともに多くの実施例がある。その使用環境を大別すると、亜鉛溶射 (jlS8300)は大気中で、アルミニウム溶射(JIS H 8301)は大気および水溶液中で主に使用されている。
亜鉛・アルミニウム合金溶射(JIS H 8305)は両者の長所を:活用するために開発されたものである。
このように防錆・防食溶射は橋梁、鉄塔、歩道橋、ウォーターフロントなどの鉄鋼構造物に対して犠牲陽極として使用されている。
一般にその工程は前処理、溶射、封孔処理、後処理の手順で施工される。
防錆・防食溶射としては主にフレーム溶射やアーク溶射が施されている。
犠牲陽極として働く防錆・防食溶射は他の成膜法と同様に素材の鉄を守る。
例えば、大気中、海水、工業用水などの中性の環境(pH4〜8)では、溶射皮膜が健全な場含には溶射皮膜上で(1)式および(2)式に示される局部電池が形成されて素材を防食する。
また、溶射皮膜の一部が溶解ならびに損失しても、その腐食反応は異種金属接触腐食と考えられる。
すなわち、溶射皮膜は主に(1)式の反応が起り、素材である鉄の表面では(2)式の反応が起り、溶射皮膜が犠牲陽極として働くので鉄は防食される。
その上に、他の成膜法に比べて気孔を有している分、表面積が大きくなるので防食寿命も長くなる。